インフォデミック

提供: covid19
ナビゲーションに移動 検索に移動
  • The COVID-19 infodemic(Lancet Infectious DiseasesのEditorial,2020年7月17日)は重要なことを言っている。とくに,インフォデミックの悪循環が生まれる仕組み(トランプ大統領やボルソナロ大統領のように雑で利己的で意図的に誤解をもたらすような誤った情報を流す政治家と,それを訂正せずセンセーショナルな速報に走るマスメディアによって,公共への信頼が失われ無援護感がもたらされ,今度はそのことが有害な誤情報が広がるための完璧な条件となり,さらに誤情報が流され続けるという悪循環,と書かれている。自分たちがこの悪循環の一翼を担ってしまっていることに自覚的であるメディアはどれほどあるだろうか?)への言及と,著者ら"We"(学術雑誌のエディタ,科学者,広く言えばアカデミア)の役割として,「これまで長い間,著者やメディアと協力して,一般公衆が読むのに適している,事実に基づいた正しい偏りのないストーリーを作ってきたが,今やもっと先を見越した反応を取るべき時で,誤情報自体や,誤情報の出版・流布に対する反対活動を積極的にすべき」への言及と,誤情報から3つの側面(経済的利益,政治的利益,実験的世論操作)で利益を得る者がいるという指摘は重要と思う。
  • 先日のマヒドン大学とのjoint meetingでhealth literacyの専門家が,まずtrustを確立してから正確な情報発信をすることでhealth literacyが上がるしinfodemicを防げると言われていたので,Lancet Infectious Diseasesの7月17日のEditorialが指摘したような,為政者が嘘をつき,センセーショナルな情報を好むマスメディアがそれを拡散し,国民がそれに踊らされた後で為政者の嘘がわかって情報への信頼を失い,それがますます為政者が嘘をつきやすい下地になる(本当のことを言ってもどうせ国民は信じないので)という悪循環が確立してしまった状況では,そもそもどうやってtrustが確立できるのか? と尋ねたら,一人の決まった責任者が毎日正確な情報を広く発信し続けるのが鍵だという趣旨のお答えだった。他にどんな誤情報が流れても,これは大丈夫という拠り所があれば,フェイクニュースが広がることを防ぐ壁となってくれるという。タイではそういう発信があったので封じ込めに成功し,国内感染はほぼない状態が続いている(陸続きのミャンマーなどからの感染者の移動を完全に防ぐことは難しいが)。なるほど,言われてみれば,封じ込めに成功した台湾でもNZでもそうしている。日本は政府が正しい情報を継続的・定期的に発信し続ける体制を作ってさえいないので,国民がtrustを持ちようがない。Infodemic対策としては最大の武器が使えない状態なのだとすると(もちろん,政権がマトモになってくれるのが一番良いが,上記悪循環の元では不誠実な政権が多数から支持され続ける可能性も高いので),何か代替手段が必要だ。インターネットでの何の権限もない一個人の情報発信では弱い。かといって,現在のようなメディアのあり方では,メディアもこの役割を担うことができない。どうしたらこの八方塞がりな事態を打開できるだろうか。今後研究として本気で取り組んでみるつもりだが,まだ見通しは不十分。