疫学

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Imperial College of Londonから[編集]

Imperial College of London Top

最初期の報告[編集]

  • 第1報
  • 第2報 Imai N, et al. Report 2: Estimating the potential total number of novel Coronavirus cases in Wuhan City, China.
  • 第3報 Imai N, et al. Report 3: Transmissibility of 2019-nCoV.

2020年2月以降の報告[編集]

  • 第4報(2020年2月10日)これまでに推定されていたCFRに比べ高すぎる値。モデルを精査しないとわからないが,これが正しかったら大変なことになる。
  • 第5報(2020年2月15日)。SARS-CoV-2(2019-nCoV)の既発表53サンプルの遺伝子配列データを系統解析した結果から,これらのウイルスの共通祖先が2019年12月8日(95%CIが11月21日~12月20日)に発生したと推定されたことと,R0のばらつきが大きい可能性が書かれていた。
  • 第6報 ハーバードのMarc Lipsitch教授のグループが2月11日にプレプリントサーバに出した論文と同様な手法で同様な結果が得られ,中国以外の国に,おそらく未報告の感染者がかなりいるのだろうと論じている。
  • 第7報 "Estimating infection prevalence in Wuhan City from repatriation flights"(3月9日)55ヶ国が武漢から緊急避難させた8000人のデータから,当時の武漢市の有病割合を推定した論文。ほぼ感染のピーク時と考えられる1月30日から2月1日の武漢市の有病割合は,0.87%(95%CI: 0.32%-1.89%)と推定されている。
  • 第8報 "Symptom progression of COVID-19"(3月11日)香港,シンガポール,日本,韓国で報告された臨床症例報告を詳細にレビューし,COVID-19の臨床像をまとめたもの。Figure 2のフレームで,年齢順に個人ごとの症状の進展を図示したFigure 3は情報量が多い。Table 5によると,発症から最初の受診相談までが平均2.10日(SD 2.65日),入院までが5.76±4.22日,治癒あるいは退院までが20.51±6.69日,死亡までが16.00±8.21日(ただし死亡症例は8例しか集めていないが)であり,平均在院日数が14.51±7.36日となっている。
  • 第9報(2020年3月16日)。筆頭著者がFerguson教授自身で,ワクチンも薬もないので,人と人の接触を減らしウイルスの伝播を減らすための多くの公衆衛生的な手段(=薬剤以外の介入NPIs)を評価している。結論として,1つだけの介入では,どれも有効性は限られているので,伝播にそれなりの影響を与えるためには,複数の介入を組み合わせて順応的に適用する必要があるとしている。英国の政策のベースになったために世間で大きく取り上げられているが,インフルエンザの伝播様式のモデルを使っていることと,クラスターの連鎖による感染拡大によるRの過分散をまったく考慮していないことから,結果の信頼性は高くない(だから,この結果の数字は,信用しすぎない方がいい)。とくに学校閉鎖の影響が大きく出るモデルになっているのだが,それでも学校閉鎖単独では死亡数抑制効果がほとんどないことを示しているので,COVID-19の伝播様式を考えたら全国一斉休校がどれほど馬鹿げた愚策なのかわかるだろう。この論文はmitigation戦略では第2波で感染者急増が医療資源を超える可能性が高いのでsuppressionでなくてはダメだと主張している点が重要なので,詳しく紹介した
  • 第12報 Walker PGT et al. "Report 12: The Global Impact of COVID-19 and Strategies for Mitigation and Suppression"(2020年3月26日掲載)緩和戦略と抑え込み戦略の世界規模の影響というタイトルの通り,まったく介入なしの場合に比べて,死亡率が10万人週当たり0.1, 0.2, 0.4, 0.8, 1.6, 3.2を超えたところで抑え込み戦略(全年齢で社会的接触を75%減らす)を導入した場合と,緩和戦略(70歳以上の社会的接触を60%減らすか,全年齢で社会的接触を40%減らす)を導入した場合で,250日間のアウトカムがどう変わるかを見ている。アウトカムとしては累積感染者数,累積死亡数を見ているが,国によって状況が異なるため,人口,GDP,所得水準別ヘルスケア利用可能性を考え,年齢構造のある確率的SEIRで上記シナリオごとの疾病負荷を計算し,病床数やICU数も考慮した影響予測をしている。結果は,世界7地域別に推定されているが,合計では,まったく介入しないと70億人が感染し4000万人が死亡するところ,0.2/10万人週という早期に抑え込み戦略を導入すると4.7億人が感染し186万人が死亡,1.6/10万人週になってから導入すると24億人が感染し1000万人が死亡となった。データとしてはwppとrDHSパッケージを用い,接触パタンについては多くの先行研究やsocialmixRパッケージを利用したと書かれている。力業な研究だが,結果のインパクトは大きい。
  • 第15報 Christen P et al. "Report 15 - Strengthening hospital capacity for the COVID-19 pandemic"(2020年4月17日)。J-IDEAというパンデミック対策計画ツールを使って,病床,医療従事者,人工呼吸器などの病院の能力がどれくらい必要か計算している。このhospital plannerはエクセルマクロを使ったワークシートで,リンク先ページからダウンロードできる(マニュアルもダウンロードできる)。
  • 第16報 Grassly NC et al. "Report 16 - Role of testing in COVID-19 control"(2020年4月23日掲載)で,対象者と状況別の検査の意味を検討している。感染リスクが高い人から感染したときの死亡リスクが高い人への伝播を減らすために医療従事者や老人福祉施設職員のPCRと抗体検査は伝播の防止に役立つと論じている。とくに,医療従事者の中でもICU勤務の人は毎週リアルタイムRT-PCR検査すべきとしている。症状の有無によらず感染リスクの高い人を定期的に検査すれば,検査感度と結果がタイムリーに出るかどうかにもよるが,伝播の1/3は減らせるとしていて,現在,英国のいくつかの病院でパイロット調査を進めて検証中とのこと。一方,一般公衆全員のスクリーニング検査には否定的。むしろ,アプリを使った接触者追跡によって,症状があれば,検査なしでも隔離する方が伝播を減らすのには有効としている。

JCMから[編集]

Special Issue

Lancet及び姉妹誌から[編集]

  • 家族集積性があることからヒト=ヒト感染が示されるとした原著論文
  • Wu JT et al. Nowcasting and forecasting the potential domestic and international spread of the 2019-nCoV outbreak originating in Wuhan, China: a modelling study. Lancet, January 31, 2020, DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30260-9(2020年1月28日までのデータを使って1月31日に掲載されたモデル論文)
  • Verity R et al. "Estimates of the severity of coronavirus disease 2019: a model-based analysis"(2020年3月30日掲載)Lancet Infectious Diseasesに載った原著論文。Editor's pickとしてハイライトされている。2月8日までの中国湖北省,2月25日までの中国以外の37ヶ国と香港,マカオのウェブサイトとメディアで報告されている個人レベルの症例データを分析し,発症から死亡または退院までの時間を推定し,中国の集計されたデータから年齢別CFRとIFR(右側打ち切りと年齢依存の未確定性を調整),中国以外の集計されたデータからのCFRも推定している。さらに,中国のデータのサブセット3665例から年齢別重症化割合も推定している。湖北省の死亡例48人のうち発症日が不明な13人,発症が1月1日より前か死亡が1月21日より前に起こっていた8人,1月28日以降に死亡した3人を除いた24人の死亡データから,発症から死亡までの平均日数は17.8日と推定され,中国以外の発症日と退院日が報告されている回復例165人のデータから,発症から退院までの平均日数は24.7日と推定された(注:これは人数も少ないし,とくに目新しい結果でもないと思う)。1月1日から2月11日までに中国でPCRで確定診断がついた症例と臨床診断された症例70117人のデータをWHO-Chinaジョイントミッションレポートから抽出し,重症化は中国の定義を用い,武漢から海外に避難した人のデータ,ダイヤモンドクルーズ号のデータ,中国の年齢別人口データと組み合わせ,Rのdrjacobyパッケージを使ってベイジアンMCMCで分析した(データとコードはGitHubで入手できるとのこと)。結果,右側打ち切りと年齢別人口構造,未確定の影響を調整したCFRが1.38%(95%CI 1.23-1.53),IFRが0.657%(95%CI 0.389-1.33)と推定されている。西浦さんのEditorial第2弾で既にIFRが0.3-0.6%と推定されていたので,それより若干高めだが,これもそれほど目新しい結果というわけではない(もっとも,インペリグループはIFRが0.8-0.9%というような推定値も出していたので,それよりは若干低めの値になったとも言えるが)。
  • ハーバードのLipsitch教授のグループからの論文Niehus R et al. "Using observational data to quantify bias of traveller-derived COVID-19 prevalence estimates in Wuhan, China."(2020年4月1日掲載)もLancet Infectious Diseasesに載った原著論文。世界195の国と地域のうち流行の中心となった中国本土を除く194から,WHOテクニカルレポート(2020年2月4日)から得た輸入症例データを使って(ただし,1月23日に湖北省がロックダウンしたために中国からの輸入症例が激減した2月4日までのデータ),シンガポールで2月4日までに検出された18症例がすべての地域の中で最高のサーベイランス能力を反映していると想定し,数理モデルを使って他の国や地域の検出確率を推定した。各国での検出数が各国への一日の航空旅行人数に回帰係数を掛けた値を期待値とするポアソン分布に従うと仮定して推定された,世界の検出確率の重み付き平均は,シンガポールの38%と推定され,それは現在報告されている輸入症例の2.8倍に相当した,としている。
  • Viner RM et al. "School closure and management practices during coronavirus outbreaks including COVID-19: a rapid systematic review"(2020年4月6日出版)という,学校閉鎖についてのレビューが載っていた。Lancetの特設サイトでEditor's Pickになっている。Summaryを見る限り,これまで何度も書いてきたのと同じ結論で,多くの国で全国休校が導入されたが,中国や香港のように他の社会的隔離政策と組み合わせて伝播抑制に成功した国でも,休校がどれくらいそれに寄与したかデータがないし,中国,香港,シンガポールのSARSアウトブレイク時のデータでは休校は流行抑制に寄与していなかったし,最近のモデル研究(インペリグループ第9報のこと)でも休校だけでは2-4%しか死亡が減らず,他の社会的隔離政策よりずっと効果が小さく,もしするなら他の社会的隔離政策と組み合わせて実施することを政策決定者は考慮すべきだという論調。自分の認識が間違っていなかったと自信がもてた……というか,自分でも時間があれば書けたな。

Eurosurveillanceから[編集]

NEJMから[編集]

IJIDから[編集]

Scienceから[編集]

  • Ferretti L et al. "Quantifying SARS-CoV-2 transmission suggests epidemic control with digital contact tracing."(2020年3月31日掲載)。Oxford大学でビッグデータを使った感染症ダイナミクスのグループリーダーをしている<a href="https://www.bdi.ox.ac.uk/Team/christophe-fraser" target="_blank">Christophe Fraser教授</a>のチームの仕事。Fraser教授自身はHIVが専門らしいが,インペリからOxfordに移った人。この論文はroute of infection別の感染確率をモデル化している点が素晴らしい。ただし,無症状感染者からの感染,発症前の感染者からの感染,発症後の患者からの感染,環境に付着したウイルスからの接触感染の合計を感染力としてモデル化しているものの,マイクロ飛沫からのクラスター感染が含まれていない点が惜しい。この論文の結論は,ウイルスの拡散が速すぎるので人力で接触者追跡をして隔離していては封じ込めは不可能(R0は2と推定された)が,濃厚接触を記録し検査陽性者が検出されたらすぐに通知するスマホアプリを十分な人数が使ってくれて迅速な接触者隔離ができれば,社会に害が大きいロックダウンをすることなく封じ込めが可能としている。倫理的要求についてのディスカッションもされている。
  • ハーバードのLipsitch教授が,Kissler SM et al. "Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period"(2020年4月14日掲載)というReportがScienceに載ったことをtweetしている。これは3月7日にプレプリントサーバに載っていたのを先見性が凄いと紹介した論文だが,Scienceにアクセプトされたのか。公衆衛生ねっとにも,2022年まではsocial distancingを続ける必要があり,2024年まで監視する必要があるという内容であると紹介された。

プレプリント[編集]

  • Riou J, Althaus CL. Pattern of early human-to-human transmission of Wuhan 2019-nCoV. doi: https://doi.org/10.1101/2020.01.23.917351
  • De Salazar PM et al. "Using predicted imports of 2019-nCoV cases to determine locations that may not be identifying all imported cases."(2020年2月11日掲載)中国以外での2019-nCoVによるCOVID-19症例が中国からの一日当たり旅客数の線型モデルで表せるという仮定と症例報告数がポアソン分布に従うという仮定に基づいたモデルを当てはめた結果,タイの症例数とインドネシアの症例ゼロという値が回帰モデルの予測区間より下に外れることを示し,タイを除いた当てはめ結果でもインドネシアは下に外れることから,未発見の症例があるのではないか(→インドネシアの推定患者数は5人)と論じている。
  • Nishiura H et al. "Closed environments facilitate secondary transmission of coronavirus disease 2019 (COVID-19)."(2020年3月3日)は,国内クラスター110症例の分析から,換気の悪い閉鎖空間のオッズ比がメチャクチャ高いことを明らかにしたもの。既にNHKや厚労省のサイトに載っているグラフを含んでいる。Rの大きなばらつきを示した論文でもあり大変重要な意味をもっているのだが,発表後長い間査読を通っていない。おそらく記述上及びデータサンプリング上の不備が問題になっているのだと思われるが,データに大きな脱落があったとしても,この解析から示されたハイリスクな環境条件の意味が大きく損なわれるわけではないので,受理されないのは不幸なことだった。
  • 新型コロナウイルス感染者の世界平均検出率はおよそ6%、実際の感染者は数千万人を超えている可能性というGigazineの紹介記事で,『フォルマー教授が2020年3月17日時点のデータから、COVID-19の感染が疑われた人のうち、検査で感染が確定した人の割合を「検出率」として算出した』と記述はミスリーティングだ。「感染が疑われた人」という表現からは,症状などから感染が疑われた人,と思ってしまいそうだが,検出率の分母の計算の仕方はまったく違う。元論文(このページの最後のRead the fulll report here.というリンクからpdfをダウンロードできる)に戻ってみると,分母となる感染者数推定の手順は以下の通り。(1)各国から報告されているCOVID-19による死者数は正しいと仮定する。(2)インペリグループがLancet Infectious Diseasesに発表した論文に掲載されている年齢別IFRはユニバーサルに正しいと仮定する。(3)各国の年齢別人口を国連のデータベースから得て,それで重み付けした年齢調整IFRを計算する。(4)死者数をそれで割ると,各国の2週間前の感染者数が推定できる。(5)その感染者数で2週間前の感染確定者数を割ると検出率が出る。ラフな推定値だが,この方法だと,3月17日時点での日本の検出率が約25%と推定されていて,その頃まではかなり検出率が良い方だったと考えられる。ただし,インペリグループの年齢別IFRは,医療措置がほぼ完璧に取れている国では過大な推定かもしれず,入院から死亡または治癒までの平均期間は20日くらいという論文も多く,感染から入院までは10日くらいと考えられるので,推定される感染者数は2週間前ではなく1ヶ月前と考える方が良いかもしれない。そうなると各国の検出率はもっとずっと低くなってしまうのだが。
  • LSHTMのグループから,Kucharski AJ, et al. "Effectiveness of isolation, testing, contact tracing and physical distancing on reducing transmission of SARS-CoV-2 in different settings"(2020年4月23日掲載)というプレプリントが出ている。個人ベースモデルのようだ。Summaryの結果のところに,楽観的だがありそうな仮定の下では,接触者追跡と検査の組み合わせだと伝播を50-65%減らせるが,大規模検査あるいは自主的隔離だけだと2-30%しか減らない,と書かれている。