分子生物学/ウイルス学
2021年6月26日 (土) 18:36時点におけるSip21c wiki (トーク | 投稿記録)による版
- Eurosurveillance: Corman VM, et al. Detection of 2019 novel coronavirus (2019-nCoV) by real-time RT-PCR. Euro Surveill. 2020;25(3):pii=2000045.
- レビュー論文 Chen Y et al. Emerging coronaviruses: genome structure, replication, and pathogenesis. J Med Virol. 2020. doi: 10.1002/jmv.25681
- Lancet: 2019-nCoVのゲノム解析の論文(2020年1月30日)
- Nature: Zhou, P., Yang, X., Wang, X. et al. A pneumonia outbreak associated with a new coronavirus of probable bat origin. Nature (2020)(2020年2月3日)患者5人から得られたウイルスの全ゲノム解析の結果,SARSコロナウイルス(SARS-CoV)とは約8割相同,コウモリに感染していたコロナウイルスの中に96%相同なものが見つかったので,たぶんコウモリ由来の新しいウイルスだろうとする論文。細胞に侵入するためのレセプターとしてはSARS-CoVと同じくACE2を利用していることも確認したとのこと。
- COVID-19ではなく,普通の風邪を起こすコロナウイルスについて1990年に行われた研究を紹介しているtweetだが,できる抗体に感染防御効果がないかもしれないという可能性を別にしても,こんなにloss of immunityが早かったら,herd immunityが確立しない可能性も考えなくてはならないのか。
- 発症前のViral Sheddingが多いというNature Medicineの短報を紹介するtweet。He, X., Lau, E.H.Y., Wu, P. et al. Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19. Nat Med (2020)(2020年4月15日)だが,二次感染の45%(95%CI 25-69%)は発症前に起こっていたという報告。西浦さんは最初の外国人記者クラブでの会見で感染の半分は無症状の人から起こっているという主旨のことを言われていた記憶があるので,新しい報告というよりは,他のデータでもやっぱりそうだったという追認になる。本当に厄介なウイルス。
- Lam TTY et al. "Identifying SARS-CoV-2 related coronaviruses in Malayan pangolins"(2020年3月26日掲載)はNatureの論文で,ゲノム分析により,コウモリだけでなくマレーセンザンコウもSARS-CoV-2のリザーバーホストである可能性を示している。Current BiologyのZhang T et al. "Probable Pangolin Origin of SARS-CoV-2Associated with the COVID-19 Outbreak"(2020年4月6日掲載)もセンザンコウの寄与を示唆しているが,グラフィカルなまとめを見るとわかるように,3つの結果が異なる経路を意味するので解釈が難しいところか。
- プレプリントサーバに載っているだけだが,Wyllie AL, et al. "Saliva is more sensitive for SARS-CoV-2 detection in COVID-19 patients than nasopharyngeal swabs"(2020年4月22日)は重要な結果。唾液サンプルとスワブサンプルについてrRT-PCRをした両検査データが揃っているのは29人38サンプル。そのうち唾液のみ陽性が8サンプル,スワブのみ陽性が3サンプル。起きてすぐ滅菌尿カップに3回唾を垂らし,蓋をして室温輸送,5時間以内にイェール大のラボでRNA抽出で,特別な前処理なし。対象者はスワブ陽性だった入院患者と無症状の人も含む医療従事者。本当に唾液使えるかも。
- Natureに出た論文(既にプレプリントサーバに発表されていた論文がreviseを経てアクセプトされたもの),Liu, Y., Ning, Z., Chen, Y. et al. Aerodynamic analysis of SARS-CoV-2 in two Wuhan hospitals. Nature (2020)(2020年4月27日掲載)は,武漢の2つの病院で2月から3月に,患者の滞在場所(PAA),患者と直接接触する医療従事者の滞在場所(MSA),誰でもいられる場所(PUA)から採取したエアロゾルサンプル中のSARS-CoV-2のRNA濃度を調べている。PAAの中では換気されていない1人用トイレが最も高濃度で,呼気や便や尿から出てきたのだろうとのこと。MSAでは個人防護具脱衣所が高濃度だったが,PUAでは入口脇の人が密集するところを除けば検出限界以下かごく低濃度だったとのこと。RNAが検出されても必ずしも感染力があるとは限らないが,submicrometre/supermicrometreレベルのエアロゾル中のRNA濃度が高かったことと,塩素系,アルコール系などの消毒薬を使って徹底的に消毒した後は,RNAがほとんど検出されなくなったので,ハイリスクな場所でのSARS-CoV-2がエアロゾル経由で感染するのを減らすためには消毒が重要であることが確認できた,と論じている。